本と映画とその他で雑多煮をします

読んだ本と見た映画についての記録。Amazon.co.jpアソシエイト。

過激なルーニー・マーラ。「ドラゴン・タトゥーの女」デヴィッド・フィンチャー

 

 「dTV」ムゲン楽しい映像配信サービス にて視聴。

「キャロル」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラと6代目ジェームズボンドのダニエル・クレイグが出演しているダークサスペンス。

原作はスウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによる推理小説、「ミレニアム」。原作がそもそもすごく人気で読まないと話題についていけない程。原作は3部作でその3部作が一度映画化されているんだけれども、原作・3部作の映画は未見です。

 

ぶっちゃけ性的描写・暴力シーンが強くて万人にお勧めできるものでもないんだけれども、エログロばっちこいの人なら気に入るのでは?と思う作品。

とにかくルーニー・マーラ演じるリスベットのキャラが強烈。一応ヒロインのポジションだと思うんだけれどもヒロインにしては異質です。

キャロルを先に見た人は(本当に同一人物なの…)ってなると思う。わたしは逆の順番だったんだけど、キャロルを見たときは(か、かわいー!別人ー!)となりました。キャロルのルーニー・マーラは天使のようでしたが、こちらでは真逆の悪魔のような風貌です。眉毛は全剃り、ピアスだらけ、身体には入れ墨、体躯は少年のようにがりがりで小柄、そして天才ハッカー。完璧にキャラ立ちです。

それに対応するようにダニエル・クレイグのミカエルはソフトな印象。ジェームズボンドのような寡黙な男とは違って、良くも悪くも中年のおっちゃんを演じてる。

 

話の中身は40年前に行方不明になった少女の事件について調査していくというサスペンス。それぞれ二人が別々のアプローチから一つの結末に同時にたどり着くというのがぴたりとピースがはまって気持ちがいい。登場人物が多くて、集中してみないと関係がわかりにくくなるので、何かしながらのながら見よりも時間をとってみるのがおすすめ。

 

次回作は結局あるのかないのかどっちなのかな。なんだか難航しているみたいですね。

リスベットとミカエルのコンビは双方バランスの良いキャラ立ちなのでまた見たいなって感じはあるけど、エログロがつらいときもあるので調子がいい時に見たい。

 

本作品の配信情報は2016年5月23日時点のものです。配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況についてはdTVのホームページもしくはアプリをご確認ください。

皮肉な結末、近未来SF。「ガタカ」アンドリュー・ニコル

※この記事にはタイトルの映画の内容に触れる記述があります。 

ガタカ [DVD]

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遺伝子操作が可能・合法になり、優れた知能・体力・容姿を持った「適合者」と、自然妊娠で生まれる、病気になりやすく、あらゆる面で適合者より劣った「不適合者」が存在する 近未来SF。

主人公(ヴィンセント)は宇宙飛行士を目指すが、不適合者ゆえにその願いはかなわない。そこで、優秀な水泳選手でありながらも事故にあい選手生命を絶たれた男(ジェローム)の生体ID(血液や指紋、尿のサンプル)をDNAブローカーから買い、適合者として宇宙局「ガタカ」に入った。念願の宇宙飛行士にも選ばれたが、そこで上司が殺され事態が変化していくという話。

 

日本で公開されたのは1998年。18年前の映画ですが、今見ても十分見劣りしない。

今だともっと映像技術できれいなザ・SFな映像ができると思うんですけれども、あまりやりすぎない絵画のような美しい映像です。好き嫌いがありそうだけれども私は情緒があっていいなと思う。あとジェローム役のジュード・ロウがめちゃくちゃに美しくて「ハア?」となりました。ユマ・サーマンもめっちゃきれいで未来の人間という感じがすごかった。

 

適合者である人間たちは、適合者故の悩みを抱えている。

生まれた時から優秀で完璧に作られた人間たちはそのような結果を出さなければとプレッシャーに日々さいなまれている。

しかし、不適合者の主人公もまた、生まれた瞬間におおよその寿命、病気になる確率などを次々と読み上げられ、適合者にはないハンデを背負って生まれる。体毛を気にし、好きな女性と結ばれても、自分の抜け毛に気を取られ石で身体をこする場面はいたたまれない。

適合者の彼らは、どんどん不適合者であるはずのヴィンセントに協力していく。適合者で不適合者より優れた存在の彼らが、まるで自分たちが叶えられない夢を託すみたいに。そして最後に不適合者の彼は自分の夢をかなえる。しかしずっと協力してきたジェロームは最後には一生分のサンプルを残して死んでしまう。

ヴィンセントの言う「可能なんだ」という言葉が印象に残る。

いくら遺伝子をいじって優秀な人材を生んでも、遺伝子では得られないものがあるということを考えていた。前に進む力や、努力し続けること、言葉にすると陳腐になってしまうけれどもヴィンセントは自分が不適合者だからということでは諦めなかった。これは今の時代のハンディキャップがある人たちと健常者との関係も同じような感じがするなと思った。ハンディキャップがあるからといって、何かを諦めたりしない姿を見て私たちは心打たれる。果たして、見る側はどちらの立場からこの映画を見るのかな。

 

 

「dTV」ムゲン楽しい映像配信サービス

本作品の配信情報は2016年5月21日時点のものです。配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況についてはdTVのホームページもしくはアプリをご確認ください。

なぜその商品を買ったのか説明できますか?「価格の心理学」リー・コールドウェル

 

価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?

価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?

  • 作者: リー・コールドウェル,武田玲子
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2013/02/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 「購買心理学」と「行動経済学」の観点からアプローチされた価格戦略の本です。

以前書いた「思考のトラップ」と系統が似た内容なんですけど、こちらではポジショニングやアンカリングなど価格設定における販売戦略について詳しく書かれています。

 価格を設定する立場にある小売業の方なんかにはもちろんなんですけど、無駄な買い物をしてしまうという消費者側が読んでもおもしろいです。

suzutomoq.hatenablog.com

 

商品を買ってもらうために様々な方法がとられている

中身は架空の商品、チョコレートポットの販売についてストーリー形式で書かれています。そのためどういった場面でどのような方法がとられているのかがわかりやすいです。

 例えば「保有効果」。わたしたちが保有したことない・触れたことがない商品よりも、一度保有した商品の方を評価する傾向があります。洋服屋さんなどで、試着をすると毎回買ってしまうといった経験はないですか?人は得るより失うことのほうが恐れる。

これを利用したのが返品(返金)サービス。気に入らなかったら返品してもらって大丈夫ですよというもの。これもやっぱり一度手にしてしまうとなかなか返品することができなくなっちゃうんですよね。

こないだ眼鏡の試着サービスっていうのがあって、家に眼鏡を届けてくれて一週間試着できるサービスなんですけど、これは絶対買っちゃうやつ…って思いました。

もうひとつ例、「無料効果」。通販などで配送料がかかる場合、配送料が高すぎるなと思ったら商品の代金が相応だとしても購入をやめたっていうこと結構経験あるんじゃないですかね。わたしはあります。

このとき何を考えているかというと、送料と商品代金についてそれぞれ個別に妥当かどうかってことを考えています。そうなると2回、判断が必要になる。そうすると購入をやめる確率も2倍になる。そこで送料無料と書いてあったら、商品の価格代金の妥当性だけ考えればいい。そうすることで消費者の購入までの障壁を減らすことができます。

本書で述べられてるほかのさまざまな方法は、あまり知らない商品を買うときや、非日常的な時(旅行とか)にはさらに無意識に誘導されやすい。確かによくわからない商品を買うときには、何か明確な基準が自分の中であるわけではないから引っかかるの致し方ない。

本当に必要なものだけを変える人間になりたいっすね。

 

ボディーブローのようにじわじわくる。「おとこたち」劇団ハイバイ

※この記事にはタイトルの演劇の内容に触れる記述があります。

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初めて舞台演劇を生で見たけど、ぼんやりしたまま帰路につきました。舞台演劇がみんなこうなのか、たまたま見たこれがそうだっただけなのかよくわからないけれども、舞台演劇すごいですね。

もっと映画なんかに近いのかと思っていたんだけれども、全然違ったな。目の前で生身の人間が全く違う人間になって、全然違う時間・場所を演じているというのは衝撃だった。

画面というフィルターがないせいか、役者さんと目が合う(気がした)んですよね、だから見る側もすごい緊張する。

 

そんなこんなで、舞台演劇初体験。ハイバイ「おとこたち」です。

作・演出は岩井秀人、4人の男たちの20代から80代までの人生をえがいた作品です。すごく笑って、後半はぐっとくる作品。

くだらないことで騒いだり、笑ったりできた若いころと、自分自身は何か劇的に変わったわけではないのに、世間から見れば年寄りになり、本流からは離れたところに流されていってしまう。本人の意思とは関係なく。

見てる側は老いることについて考えざるを得ない。

劇中の死っていうのは急にポンッと出てきてそれで終わる《点》なんだけれども、老いはそれぞれの人間とともにある《線》なんですよね。

ただ笑えた出来事が、そこに老いが入ると手放しに笑えなくなったりする。

最初のシーンが最後にも出てくるんだけれども、見始めとは全然印象が違って「ああ…ああ…」という気持ち。喜劇的だけれども、同時に悲劇的要素が含まれていて、でもその逆でもあってその辺が人生っぽいなあって思う。どちらか一片だけではいられない。

 

劇中にはCHAGE and ASKAの太陽と埃の中でという曲が作中にも出てきます。

追い駆けても追い駆けても

つかめない ものばかりさ

愛して 愛しても 近づく程見えない

この歌が本当に印象的だった。過去の煌びやかな時代にはいつの間にか遠ざかってしまったけれども、まだそこにいるんだという叫びにも思える。

 

ボディーブローのようにじわじわ効いてきて、見終わった後もずっと考えたり思い出したりしていてつらい気持ちになったりもしてました。とってもよかった。

また見たいけれども残念ながら再演分は全部終わっちゃってるんですよね。他の舞台演劇もっと見てみたい。

 

ある女

ある女

 

 

現代版ホームズ!「SHERLOCK/シャーロック」ベネディクト・カンバーバッチ他

 

 ちょっと前からドはまりして、見終わるのがもったいなくて少しずつ見ている「SHERLOCK/シャーロック」!

アーサー・コナン・ドイルの小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを翻案したイギリスBBC製作のテレビドラマ。海外ドラマ分類ですね。タイトル通り、シャーロック・ホームズとワトソンが≪現代≫で難事件を解決するストーリーです。(携帯も使うし、ワトソンはブログもやってるよ!)

「dTV」ムゲン楽しい映像配信サービス で配信しているのは知っていたんだけれども、『忌まわしき花嫁』が映画館でやるというので、その前にシーズン1~3を見ようと思って見始めたのが最初。

好みだと思うけど、『忌まわしき花嫁』よりシーズン1~3の方が好きかな。これから『忌まわしき花嫁』を見る方はシーズン1~3を必ず見てから見るのをオススメします。話がよくわからなくなっちゃうので!

 

ベネディクト・カンバーバッチマーティン・フリーマンのコンビが最高

シャーロック・ホームズベネディクト・カンバーバッチジョン・ワトソンマーティン・フリーマンが演じています。ベネディクト・カンバーバッチは「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」なんかに、マーティン・フリーマンは「ホビット」のシリーズにでてますね。両者とも特徴のある顔なので、顔が全然覚えられないわたしでも見覚えがある面々。

このコンビのやり取りがとってもいい。時に喧嘩しながら、時に協力しながら、時に騙しながら事件を解決していきます。ホームズが嘘泣きしたり、ワトソンがホームズに激怒してぶん殴ったりします。

多分日本人がやるとくさくなっちゃう演技も自然にやっちゃうのがいい。すごい上手。

 

とにかくシーズン1だけでも見てみて!

1話につき1時間半くらいだいたいあるので、ほぼ映画くらいの見応えがあるし、エンターテイメントとして最高なのでシーズン1だけでも見て欲しい。見てよかったらシーズン2・3、映画版…と見て欲しい。シーズン4も撮影が始まっているみたいなので個人的にすごい楽しみです。

 

 

 

 

本作品の配信情報は2016年5月15日時点のものです。配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況についてはdTVのホームページもしくはアプリをご確認ください。 

ファンタジーで読む哲学の世界。「ソフィーの世界」ヨースタインゴルデル

 

ソフィーの世界

ソフィーの世界

 

前回の記事でもちらりと出た「ソフィーの世界」 。

1995年に出版されベストセラーになっているので、本屋で見かけたことがある人もいる筈。
内容は14歳の少女、ソフィー・アムンセンの元に不思議な手紙が届く。「あなたはだれ?」「世界はどこからきた?」といった問いが書かれた手紙を発端に謎の人物から哲学講座を受けることになる…といったお話。

 

ファンタジー小説をベースにわかりやすく解説

14歳の女の子に語る設定なので、詳しくなくてもとってもわかりやすい。ソフィーと共にわたしたちも学ぶ形になります。その為、「哲学について知りたいな」っていう人がはじめに読む本に向いていると思います。有名な哲学者が時系列順に網羅されているのと、その当時の歴史背景等も説明されているので、どうしてその思考が出てきたのかっていうのも理解しやすい。

何よりファンタジー小説という体で書かれているので、哲学抜きにして物語を純粋に楽しみながら読めます。めっちゃ長いけどね、読めます。

 

興味を持ったらさらに哲学の本を読むとよいよ!

有名どころは押さえているので、読んでる中でひとりくらいは気になる哲学者が出てくると思うんですよね。そこからその哲学者関係の本を読んだり、もっと他の哲学の本を読んだりするのもよいと思う。

もうすでに過去の偉人たちが物事の捉え方、生き方、等を考え残しているのを使わない手はないと思う。そういう導入的本かなって思います。

 

前回の記事、哲学用語図鑑も一緒におすすめ。

suzutomoq.hatenablog.com

 

教養としての哲学。「哲学用語図鑑」田中正人 / 編集監修:斎藤哲也

 

哲学用語図鑑

哲学用語図鑑

 

 

suzutomoq.hatenablog.com

 ここでもちらりと登場したけれども、今日は哲学の本。

わたしがはじめに読んだ哲学の本は「中学生からの哲学「超」入門―自分の意志を持つということ」という本だったのだけれども、そこから興味を持って体系的に知りたいなと思って「ソフィーの世界」と共にこれも買いました。

結果、買って正解。

 

たくさんの哲学者とその思考をピクトグラムでわかりやすく

哲学者っていっぱいいて、それぞれが影響を受けてたり受けていなかったり、流れをくんでたりくんでいなかったり…といった感じで相互関係がごっちゃになりやすい。

それをそれぞれの時代ごと、実存主義現象学など思考法ごとに分類していてわかりやすい。ピクトグラムを使っているので、文字だけよりも視覚的に理解しやすい。どっちかっていうと文字より絵の方が多いです。

そんな感じなので「ソフィーの世界」を読んでは、その時代の哲学者とその考え方をおさらいするという感じで同時進行で読んでいました。おかげで誰が誰だよ、みたいな感じにならずに読み進めることができました。

 

言い方は悪いがトイレに置くのにぴったりな本

言い方が悪いんだけど褒めてます。1ページだけ読んでも成り立つし、1人の哲学者の考え方を数ページ読んでも面白いし、もちろん時代ごとに読んでもいい。隙間の時間で好きなところからパラパラ読んで面白い本だなって思う。

もちろん哲学のこと知りたいって人には図鑑、辞書みたいなポジションでおすすめです。

ちなみにわたしはニーチェ推し。現代の哲学は科学の発展と共にちょっと夢がない感じだけれども、古代から近世くらいの哲学は夢がある感じですきだな。