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ボディーブローのようにじわじわくる。「おとこたち」劇団ハイバイ

※この記事にはタイトルの演劇の内容に触れる記述があります。

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初めて舞台演劇を生で見たけど、ぼんやりしたまま帰路につきました。舞台演劇がみんなこうなのか、たまたま見たこれがそうだっただけなのかよくわからないけれども、舞台演劇すごいですね。

もっと映画なんかに近いのかと思っていたんだけれども、全然違ったな。目の前で生身の人間が全く違う人間になって、全然違う時間・場所を演じているというのは衝撃だった。

画面というフィルターがないせいか、役者さんと目が合う(気がした)んですよね、だから見る側もすごい緊張する。

 

そんなこんなで、舞台演劇初体験。ハイバイ「おとこたち」です。

作・演出は岩井秀人、4人の男たちの20代から80代までの人生をえがいた作品です。すごく笑って、後半はぐっとくる作品。

くだらないことで騒いだり、笑ったりできた若いころと、自分自身は何か劇的に変わったわけではないのに、世間から見れば年寄りになり、本流からは離れたところに流されていってしまう。本人の意思とは関係なく。

見てる側は老いることについて考えざるを得ない。

劇中の死っていうのは急にポンッと出てきてそれで終わる《点》なんだけれども、老いはそれぞれの人間とともにある《線》なんですよね。

ただ笑えた出来事が、そこに老いが入ると手放しに笑えなくなったりする。

最初のシーンが最後にも出てくるんだけれども、見始めとは全然印象が違って「ああ…ああ…」という気持ち。喜劇的だけれども、同時に悲劇的要素が含まれていて、でもその逆でもあってその辺が人生っぽいなあって思う。どちらか一片だけではいられない。

 

劇中にはCHAGE and ASKAの太陽と埃の中でという曲が作中にも出てきます。

追い駆けても追い駆けても

つかめない ものばかりさ

愛して 愛しても 近づく程見えない

この歌が本当に印象的だった。過去の煌びやかな時代にはいつの間にか遠ざかってしまったけれども、まだそこにいるんだという叫びにも思える。

 

ボディーブローのようにじわじわ効いてきて、見終わった後もずっと考えたり思い出したりしていてつらい気持ちになったりもしてました。とってもよかった。

また見たいけれども残念ながら再演分は全部終わっちゃってるんですよね。他の舞台演劇もっと見てみたい。

 

ある女

ある女